映画「おいしいコーヒーの真実(BLACK GOLD)」
映画「スーパーサイズミー」のヒット以降、食べ物に関するドキュメンタリー映画って結構作られてきたと思います。どれも面白く、そして多くの映画はどっちかと言えば、テーマは先進国の人間が口にするものの「安全性」だったりした訳ですが、この「おいしいコーヒーの真実」は、コーヒー発祥の地、エチオピアの貧しいコーヒー農家の人々が被る不条理を描いたものです。出てくる数字は映画を信用することにします(よ)。
この映画によれば、エチオピアの輸出の67%はコーヒー豆によるものです。多くの土地はコーヒーの生産にしか向いていない場合もあります。1989年にコーヒー豆の価格に関する国際協定が撤廃され、コーヒー豆の価格は全世界で急速に下落しました。90年代に入ると世界的にコーヒー飲料ビジネスが発達し、アメリカではスターバックスなどの躍進もあって、この映画の製作された時点で300億ドルから800億ドルへと成長。全世界のコーヒー豆の価格はアメリカの市場で決まりますが(年間1400億ドルの取引)、ここでの先物取引が多くのコーヒー豆生産国を苦しめることになります。そして世界のコーヒー市場はネスレやP&Gなどの4社ほどがほぼ独占しているということだそうですね。そしてエチオピアのコーヒー農家は6度に渡る中間業者が入って小売店に入るので、コーヒー豆は買い叩かれてしまいます。エチオピアのコーヒー農家としては、できればせめて直接焙煎業者に販売したいと考えているのだそうです。エスプレッソ1杯(4ドルくらいするかしら?)に50粒のコーヒー豆が使われるのですけれど、そのコーヒー豆の価格はエチオピアではたったの0.12ドルにしかなりません。33分の1が原価ということですね。エチオピアの女性達が一日8時間不良なコーヒー豆を選り分ける作業をしても、日給は0.5ドルです。多くのエチオピアのコーヒー農家の人々は別に家電製品や車が欲しい訳ではなく、安全な水と子供達への初等教育を確保したいだけなのです。そのためにはコーヒー豆1キロに対してエチオピアの貨幣でせめて5ブル欲しいと言うのですね(実際は2ブルだから20円ちょっと?)。5ブルって0.65ドルですよ。
アタクシの家では「小川珈琲店」の豆を使ってコーヒーを入れますが、今表示を見てみると、生産国はブラジル、メキシコ、コロンビアの豆のブレンドみたいですね。そして1袋180グラムで価格は548円します。エチオピアの豆じゃないから一緒にできないですけれど、1グラム大体3円ですね。1キロだと3000円になります。そして今日の為替は1ドル76円ぐらいなので、1キロのコーヒー豆が39ドルくらいか。39ドルと0.65ドルってね、60倍ですね。まあ間に色々取引と輸送と加工がある訳ですけれども、エチオピアのコーヒー農家が貧困にあえいで、どうか公正な取引を、と願っても当然なのでしょうね。エチオピアでは飢餓も発生しますので、困った農家はチャットを栽培します。チャットはエチオピアでは違法なものではありませんが、欧米諸国では違法な麻薬植物であります。チャットが20束もあれば30ブルにもなるんですって。真面目にコーヒー栽培するより簡単にお金が手に入るのです。飢餓が発生すれば国際支援がありますが、エチオピアの人々がそれを手放しで喜んでいるわけではありません。「自立できず他人に恵んでもらわなければ生きて行けないさまを子供達に見せるのは辛い」と。WTOでもアフリカの代表は3人に対してEUの代表は650人とこれでは貿易の話し合いになどなりません。アフリカの貿易のシェアは1%です。もしあとたった1%シェアが増えれば、今現在アフリカ諸国になされている国際支援の5倍の金額がアフリカ諸国にもたらされるという試算があるそうです。
コーヒー農家を取りまとめる農協の代表のタデッセさんはフェアトレードを様々な企業にもちかけます。イタリアやロンドンなどで。NY市場で取引されているよりもはるかに高品質なコーヒー豆を提供することが可能なので、応じる企業もあります。そしてフェアトレードで何とか手に入ったお金を(日本からすればきっと僅かな金額と察します)地域に持って帰ります。コーヒー農家の人達は、そのお金で何を望むでしょうか。それは「子供達の教育」なのです。その金額ではとても満足な校舎は建設できず、教員も十分に雇えませんが、子を持つ父親達は「そのお金に合わせて、自分の服や靴を売ってでも何とか子供達に教育を受けさせたい」と言うのですね。それも本当に若い父親達(きっと早婚なのでしょう、どうみても20歳くらいで、先進国ならばまだ自身が学生であるような世代です)が必死で語るのです。この映画では冒頭からエチオピアの人々は真剣に子供への教育を熱望しているのです。食べる物が少なくても、裸足でも。でも昔アウシュビッツに収容されていたユダヤ人に「一番失われたと思うものは?」とインタビューしたときに「教育を受ける機会」と答えた人が多かったというエピソードを本で読んだことがあって、そういうものなんだろうなと。
そういえば、今ではすっかり女性の化粧品として定着したシアバターでも、かつて同じようなことが起こっていたのですね。シアバターを作るビジネスを欧米の企業がアフリカの農家(特に女性)に持ち込みますが、契約書が読めずに不当に搾取されたり、使うべき農薬や肥料の説明書きが読めなくて結局栽培に失敗して負債を抱えた農家も過去多かったのです。このシアバター問題に関しては、有効なプロジェクトが立ち上がりまして、ブルキナファソで、1990年に女性達に読み書きを教える団体「Songtaab-Yalgre Association」が女性が身につけた読み書き能力をシアバター製造に結びつけることに成功したのですね。現在、女性達は自身の手で団体運営を行い、シアバターの製造で得た収益を分配しているそうです。日本政府もこれに支援をしていて、国際連合開発計画 (UNDP) は2007年、ガーナで特に貧しい地域である北部州のサナリグ地区とワレワレ地区にて「北部ガーナにおけるシアバター産業支援を通じた現地女性のエンパワーメントと貧困削減」プロジェクトを始めたんですって。でもねえ、アフリカ諸国の貿易力を根本的に上げるのとはちょっと・・・違うかなあ。
※小川珈琲店では「フェアトレードモカブレンド」という商品も売り出されているのに気がつきました。エチオピア産の豆が55%、グアテマラ産が45%。この映画の影響なのでしょうか。しかしお値段は170グラムで900円ほどとちょっと高めであります笑。小川珈琲店の他のブレンドに比べて著しく売れ残っていたので夫が「気の毒過ぎる・・・」と言って買い求めていました。美味しいですよ♪
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>ロゼさん
コメントありがとうございます。いつも読んで下さっているとのこと、とても嬉しいです。お知り合いがこの映画の字幕に関わられたのですか!それは素晴らしいお仕事ですね。市場原理と商品の価格帯の固定は反することですから、おっしゃる通り難しいですよね。そういう事態に対して先進国は自国の農家に補助金を出してサポートする余裕がありますが、アフリカ諸国では・・・無理なんでしょうね。
不況と言われつつ豊かさを享受している私達日本人は、「アフリカ諸国に対して公正な取引を」と言ってみても、言う意義はもちろんあるものの、彼らの犠牲の上に国の利益が保たれ、日々の生活が成り立っているのかと思うと、なんだか圧倒的に説得性が足りない気がして来たりして、私も一杯のコーヒーを見つめて「・・・・」となってしまいます。
投稿: のうのう | 2011年10月 2日 (日) 23時59分
こんにちは。のうのうさんの書く文章が好きで、いつも更新を楽しみにしています。
この映画、知り合いが字幕にかかわったので、だいぶ前ですが見ました。
一時はアメリカの先物市場のコーヒー価格も、価格帯がきまってたのですが、今はそれも自由市場経済の障害とみなされますので、なかなかできないらしいですね。
まじめに働く人が普通に暮らしていけたらいいのにと思いますが、私も知らない間に、何か公正でない取引の恩恵をたくさん受けてしまってるんだろうと思うと複雑な気持ちになります。
投稿: ロゼ | 2011年10月 2日 (日) 16時40分